· 

膝の痛み、原因と改善方法

文責 柔道整復 創健堂 院長 榊原孝文

膝の痛みに悩んでいる方は少なくありません。

 

膝の痛みで代表的なのは変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)、中高年の女性に多く40歳以上で発症することが多い疾患で、現在、日本国内で1,000万人いるといわれています。

 

変形性膝関節症は、その症状により、初期・中期・末期と3つに区分され、加齢や筋力の低下、軟骨の減少などが複合的な要因となってはっきりと原因を特定できないものを「一次性」、ケガや病気など原因が明確なものを「二次性」とされています。

初期

朝、起床時の違和感といった動作時に感じる軽度の症状のみで、階段の上り下りやしゃがみ込み動作、正座などは特に支障なく行える程度のものです。

 

中期

初期症状が悪化し、痛みとして感じるようになり、痛みの頻度が多くなり、膝を曲げるのがつらくなったり伸ばしきれなくなったりと、日常生活で次第に支障をきたすようになります。

また、膝関節に炎症が生じて熱をもったり、関節が腫れること(関節水腫)で曲げると張り感とともにだるさを感じたりします。そして、炎症が長期間続くとやがて関節自体が変形をきたし、曲げ伸ばしなどの動作の中でゴリゴリといった音を感じるようになることもあります。

 

末期

さらに変形が進み、痛みも強く、日常生活の歩行・階段の上り下り、立ち座り等の動作においても大きく支障をきたすようになり、買い物や旅行などの行動も思うようにできなくなり活動範囲が狭くなってしまい、高齢者では介護度が上がったり、認知症のきっかけとなる深刻な問題といえます。

 

深刻な状態にならないうちにしっかり対処する必要がありますが、違和感や痛み、こわばりといった症状があるときに、消炎鎮痛剤(シップ薬)を貼っておけば良くなると考えるのは必ずしも正しいとはいえません。

 

理由は、消炎鎮痛剤は血流を抑える働きがあることから、傷んだ部分の血行が悪くなるためにかえって治るのが遅れてしまうことがあるからです。

 

私たちの身体の中で、心臓や脳、目の水晶体など一部の組織を除いて、ほとんどの組織で代謝といわれる古くなったものが新しいものに入れ替わるという機能が働いています。

分かりやすいのが皮膚です。皮膚は古くなったものはアカとして剥がれ落ちて、下には新しい皮膚が作られることで皮膚としての機能を果たしています。

 

膝関節を構成する骨・軟骨・靭帯・筋肉などは、その組織によって速度に違いはありますが、全て代謝が行われています。

 

膝関節に日常生活あるいはスポーツなどで負荷がかかり、組織が傷められた時、修復のための代謝機能が働きますが、この場合は通常より早い速度で代謝が進みます。そして、修復が完了すると、本来の代謝速度に戻ります。

 

代謝に必要な栄養分を送り届けたり、不必要になった物質を運び去るために必要なのは血流です。この血流を消炎鎮痛剤の働きで抑えてしまったら、代謝機能が充分に働かずいっそう治りが遅くなってしまいます。

関節部分が赤く腫れて熱をもち痛みが強いという場合に、消炎鎮痛剤でその症状を和らげることは必要なことといえますが、強い症状が軽減したのちには、血流を促して代謝が円滑に進むよう心掛けることが大切です。

 


どこかにぶつけたとかねじるなど、ケガをしたことが明らかな場合は腫れを最小限に抑えるために冷却するのは正しいのですが、いつの間にか感じるようになった症状で、腫れも熱感もない場合は、先ずは温めて様子を見るほうがベターといえます。

膝に痛みを感じさせる別の原因

変形性膝関節症の初期のものには、外見上の変形は見られません。X線検査・MRI監査などで軟骨組織の異常が認められることで変形性膝関節症と診断されるようです。

 

これはあくまで私の経験からお話することですが、変形性膝関節症と診断された膝の痛みの中で、膝関節以外の部分に原因があるケースが少なくありません。外見上、変形が見られない場合には、膝関節以外に原因がある可能性が高いといえます。

 

どこに原因があるのかというと「腰」、腰椎(ようつい:背骨の腰の部分)のずれです。

 

膝に表れる症状には様々なものがあります。

・朝の歩き始めの違和感

・しゃがみにくい

・立ち上がりにくい

・正座はできるが、太ももや膝周辺に張り感がある

・正座をした時、片方の太ももだけが太いと感じる

・正座をした時、膝の裏側に何かをはさんでいるような圧迫感がある

・正座をした後、膝を伸ばすのがつらい

・階段を上る(下りる)時に、膝に痛みを感じる

 

これらの症状では、来院時その場で確認できるものとできないものがあります。私は、その場で確認できる症状で、膝関節に変形が見られず腫れや熱感もない場合は、腰椎のずれが生じていないか必ず確認して、生じている場合は矯正を施してみるのですが、症状の改善が見られることがとても多いのです。

 

・しゃがみにくかったのがしゃがみやすくなる

・立ち上がりにくかったのが立ち上がりやすくなる

・正座時の太ももや膝周辺の張り感が軽減する

・正座時の膝の裏に何かをはさんでいるような圧迫感が軽減する

 

このように、腰椎のずれが原因の症状は、そのずれが矯正できれば、その場で症状の改善をご自身で実感して頂くことができます。

 

違和感・張り感・痛みなど症状がある場合、そこを温めたり冷やしたりマッサージしたりと、その部位に何らかの原因があると考えがちですが必ずしもそうではありません。

 

また、外見上の変形があったとしても、そこに表れている症状の全てが変形に起因するものとも言い切れません。変形による痛みなどの症状と、膝をかばうなど日常生活における姿勢の悪さから腰椎がずれて生じる症状が重なっていることもあります。

 

このような場合には、腰椎のずれを矯正することで、それまであった症状が半減するといった変化が現れます。

 

このようなことから、長期にわたって膝の痛みその他の症状に悩まされている時には、腰が原因ではないかと疑ってみる必要があります。