文責 柔道整復 創健堂 院長 榊原孝文
坐骨神経は、脊柱の腰椎の下部からお尻、太もも、ふくらはぎにまで通っている神経のことです。この神経に沿って現れる痛みを坐骨神経痛といいます。
坐骨神経痛は症状につけられたもので病名(疾患名)ではありません。坐骨神経通痛は、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、変形性腰椎症、梨状筋症候群、背骨のずれなどによって坐骨神経が刺激を受けた時に表れます。
症状は以下のような部位に表れます。写真では左側ですが、左右のどちらにも表れます。
痛みの現れ方は、最初は僅かな痛みから数か月を経て徐々に強くなるものもあれば、症状が現れてから短期間で症状が悪化するケース、また長期間、中には年単位で同程度の症状が継続する場合もあります。
短期間で急激に症状が悪化する場合には、腰痛の定義と分類の説明にあるような重篤な疾患が考えられるので、医科における精査が必要です。
しかし、坐骨神経痛の原因が病理解剖学的(西洋医学的)に明らかにできるものばかりではないので、明らかにできないものは、西洋医学的な処置として、飲み薬、貼り薬などの消炎鎮痛剤の処方やブロック注射で痛みを感じている神経を一時的に麻痺させて様子を見て経過観察をする方法がとられます。
腰痛については、原因が特定できる腰痛(特異的腰痛)が15%、原因が特定できない腰痛(非特異的腰痛)が85%という統計が厚生労働省が発表する資料にも出ています。
私のこれまでの経験でお話しますが、非特異的腰痛に伴う坐骨神経痛があります。
『腰痛体操』が、書籍やマスメディアで紹介されることがありますが、体操によってずれた背骨を的確に正しい位置に戻すのは難しいです。
先に説明した梨状筋症候群は、病理解剖学的に明らかなものではありません。〇〇症候群とは原因がはっきり特定できない病態につけられる名称です。
また、背骨のずれが坐骨神経痛の原因になることがありますが、背骨のずれによる腰痛は、明らかな病変ではないため非特異的腰痛の一つとして分類されてしまいます。
実際に体操をして、悩まされていた腰痛や坐骨神経痛から解放されたという方はいるでしょうが、それはたまたま正しい位置に戻ったというだけで、すべて同じように改善するわけではありません。
悪化したケースもあります。それは、どのようにずれているか分からないまま体操をするために、それまでずれていた骨がさらに悪い方向に動いてしまったからと考えられます。
背骨のずれが原因の症状なら坐骨神経痛と診断されていても、ずれが改善すればその症状は早期に改善します。
背骨のずれが生じる理由は、日ごろの姿勢の悪さと、背骨を取り巻く筋肉の過緊張に因るところが大きいといえます。このことから、ご自分でできる改善方法は、腰にかかる負荷をできるだけ少なくして、腰を含めて症状の出ている部分を温めて血流を良くすることです。
背骨のずれを自分で治そうとしても、なかなかうまくはできません。しっかりとした手技ができる人(経験豊富な治療家)に任せるのが適切です。
大切なことは、痛いからといって痛み止め(消炎鎮痛剤)の飲み薬や貼り薬を安易に使用しないことです。消炎鎮痛剤はその性質上、血行を抑制するように働きます。血行不良は筋緊張をさらに強める原因になります。これは登録販売者としての私からのアドバイスとなります。